ミラノ工科大学チーム、2度目の成功を獲得。
Skyward は、航空宇宙ロケットの設計を目的に、ミラノ工科大学のさまざまな学部(航空宇宙、機械工学、コンピューター科学、エレクトロニクス)からエンジニアが集まる学際的な協会である。 ロケットの設計・製造においてはすでに10年の経験をもち、大学で組織される協会としては国際的にも異色の存在であり、見事2022年EuRoC の優勝に輝いた。
EuRoC は、ヨーロッパ初の大学ロケットコンテストであり、後援を行うのはポルトガル・スペース。旧大陸中の学生たちを集めてプロジェクトを「ローンチ」させ、科学、技術、工学、数学(STEM)の教育、技術スキルの向上を図るのを目標とする。
Skyward が2021年に成し遂げた「部門」賞に続く快挙である。
コンテスト
EuRoC は、人工衛星をある場所、ある時間に軌道に乗せるために、実際の航空宇宙ミッションの動作を「再現」できるロケットの打ち上げを競う。コンテストは3000メートルと9000メートルのカテゴリーに分かれ、目標の高度に最も近づき、さらに落下するロケットを予定の場所で無傷回収することに成功したチームが勝利する。
Skyward が参加したのは3000メートルカテゴリー。プロジェクトは一連の基準に従って評価された結果、以下の賞の授与がなされる。
- EuroC Award、総合的な評価
- 技術賞 技術面の評価
- チーム賞 チームが準備期間中およびコンテスト中、いかに組織され、信頼関係にあるかを評価。
- ニュースペース賞 市場での需要を評価。
- フライト賞 ロケットの飛行性能を評価。
2022年、Skyward は EuRoC賞、技術賞を獲得し、他のチームが受賞したチーム賞とフライト賞でも最高得点をたたき出した。
さらに、ポルトガルの企業がスポンサーを務めるアナコム賞でも、ロケットの2つのコンポーネントに搭載された両方のテレメトリーがそれぞれ1位と2位を獲得した。
2022年には登録している25チームのうち19チームが EuRoCに参加した。
Pyxis ロケットとRollon の役割(およびリニアモーション)
Skyward による設計のロケットは Pyxis と名づけられており、以下が「技術仕様」である。
- 長さ5メートル
- 直径15cm(エアブレーキに対応)
- 14 kg (空の場合) – 21 kg (エンジンを含む)
- カーボンおよびグラスファイバーで作られているため、重量を軽減でき、テレメトリデータを地上へ送信できる(グラスファイバーにより可能)。コンパートメント、フランジ、エアブレーキ間の接続にはアルミニウムを採用している。
公式テレメトリによると、ロケットは大会中3033メートルの高度に達し、予定の場所で無傷回収に成功。実に価値のあるこの成果には、Rollon のリニアレールが一役買っている。
その理由とは。
Pyxis は固体燃料を用いて推進力とする。このエンジンは、一度点火するとオフにしたり調整したりができず、ロケットを3000メートルまで推進しなければならない。目標高度に可能な限り近づけるため、1000メートルに達するとロケットはエアブレーキを開く。テレメトリと搭載する技術を利用して、ロケット自体が制御するシステムだ。その後、徐々に巡航速度を落とし、受信データに従ってエアブレーキを出し入れして3000メートルの目標高度に近づける。
アルミ製エアブレーキは、ロケット内部で直線運動をする Rollon のMini Mono Rail によって押し出される。
コンポーネント間の摩擦をできるだけ減らし、エアブレーキを音速(もしくは大型旅客機)にきわめて近い速度、つまり 1,000 km/hr で出し入れするためリニアガイドが必要とされた。
エアブレーキはクレジットカードほどのサイズであり、この状況下では約30㎏の圧力がかかってくる。高性能なレールなしには、エアブレーキを正しい方法で開いて調整することができず、3000メートルという目標高度に到達することができない。
そこで Rollon のように信頼性の高いリニアガイドを選択することにより、適切な剛性と耐荷重を保証できる。
Rollonのソリューションを選択
Rollon のソリューションを選ぶことは、同じ地域で活躍する企業を結集して長期的なパートナーシップを結び、地域に共通の価値を生み出すことに貢献できるというだけでなく、Pyxis が以前の方法では解決できなかった課題に取り組む必要があったからである。
エアブレーキ引き出しの際、スライダーがロケットのコンパートメント内にとどまっている状態でレールが動作しなければならない点である。エアブレーキを出す際はレールが曲がる状態に置かれる。これが最大の剛性を保証できるRollon のソリューションが選ばれた理由である。
同社技術部門で条件を評価し、製品を特定した結果が Mini Mono Rail であり、実装時に低摩擦係数を実現しながら、剛性、信頼性、および滑り性に関して適切なパフォーマンスを保証する。しかも非常に限られたスペースで。
滑り性は押し出しの際およびエアロブレーキがロケット本体に戻るときに保証される。ロケットが遠地点に到達し、2つのコンポーネントに分かれて降下を開始するときにパラシュートが開くが、そのときエアロブレーキが邪魔をしてはならない。
回収に関しては、必ずしもレールとエアロブレーキによって制御される必要はなく、むしろ搭載されたテレメトリに接続したGPS システムをもつサーボモーターが誘導し、パラシュートを適切にコントロールし、ロケットのコンポーネントを意図した落下場所と回収ポイントへ導く。
研究および地域を支援、技術に投資
プロジェクトが成功を収め、Skyward と Rollon が相互満足の関係を構築したことで、2023年もコラボレーションを継続することが決定された。
Skyward イニシアチブ(およびその他)への無償の直接支援に見られるように、このプロジェクトは社会の持続可能性に対するコミットメント、そして時代に即した技術投資を示すものである。
実際、航空宇宙は高度な技術、複雑性を管理する能力、そして問題解決のための能力を必要とする分野である。また、技術の発展に幅広い影響を与え、他の応用分野にも及ぶ進歩を生み出すセクターでもある。
この分野でのRollon のリーダーシップは明確であり揺るぎのないものだ。Pyxis の成功がそのよい例である。